「冬の肌」(3/3)/月乃助
 
と、女の横へ緑と赤の縞が入ったくたびれた毛布の下に体を並べた。
 濃い木の香りが女の体から立ち上っている。
 森に住む娘。同じ血の娘。
 冬の客の冷たさに娘は、小さく叫び声を上げると、何か聞きなれない言葉を口にのぼらせた。
 それでも、その声音が怒っているのではないのは、娘の笑顔で分かる。
 長い間、そんな笑顔を見る事がなかった。
 重はゆっくりと酒臭い息をふーと一つ吐くと、海を忘れさせてくれそうなその娘の柔らかな胸の上に、自分のごつごつとしたそれを重ねて行った。
 寂しさか、悲しさか、重の心の中に押し潰されているそんなもののすべてを、今抱いているこの娘が吐き出させてくれそうだった。
 一夜次に目を覚ましたら、また、暗い冬空の下、海の上で引き綱を握り締めに船に戻るのだろうに、今は、ただその娘の肌の香りと温もりの中、性急に娘を求めながら故郷の陰鬱な杉森の中で娘を抱いている、そんな気がしてしかたなかった。 (了)

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