鮭の頭 /服部 剛
 
仕事を終えて 
草臥れた足を引きずっていった 
夜の職場の食堂に 
巨きな鮭のお頭達が 
どっさり、皿に盛られていた。 

たじろいだまま 
ぼうっと手を出せない僕に 
焼かれた白い目玉等は
いっせいに 
ぎょろり、ぎょろりと囁き出す 

( 私等ハ、川ノ激流ヲ昇ッテ 
  卵ヲ産ム、母親デス・・・ ) 

「死んだ魚の目」というのは 
のっぴきならない、大嘘です。 

虚ろな目をした僕は 
いつのまにか 
直立する、可笑しな魚になっていた。 




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