鮭の頭 /
服部 剛
仕事を終えて
草臥れた足を引きずっていった
夜の職場の食堂に
巨きな鮭のお頭達が
どっさり、皿に盛られていた。
たじろいだまま
ぼうっと手を出せない僕に
焼かれた白い目玉等は
いっせいに
ぎょろり、ぎょろりと囁き出す
( 私等ハ、川ノ激流ヲ昇ッテ
卵ヲ産ム、母親デス・・・ )
「死んだ魚の目」というのは
のっぴきならない、大嘘です。
虚ろな目をした僕は
いつのまにか
直立する、可笑しな魚になっていた。
戻る
編
削
Point
(4)