off/夏嶋 真子
嘘のような言葉を
本当のようにつぶやく、
初潮を迎えたばかりの十一歳のわたしがくれたキスは
ほんとうの夜の味がするから
悲しみを手放したばかりのわたしは
うまれなかった子たちのやわらかな死に
愛されるように、眠る。
眠るわたしの意識の淵で
ルナと名づけた子猫が
あたたかな前足を交互に動かし
わたしの冷え切った子宮を押し続け
肌を吸いながら喉をならす。
母猫の乳房からミルクを吸うそのリズムが
わたしを母性に還す。
波の音で囁く。
(愛している、の。)
ねぇ、ルナ。
ただそのことだけが、
世界中の空気をゆすっているね。
体中の母たち
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