「冬の肌」(2/3)/月乃助
重も、その娘に手を差し出すと、つとその手を握り締めて暗い廊下を、何人もの男をそうしてきたような慣れたいざない方で部屋へと連れていかれる。
そんな時、言葉など必要ないのが、いまだに英語もままならない重にはやはり有りがたかった。
歳は十五か六。重よりも随分若い。日本の娘も売られたらそんな年で男達の相手をするのは、重も生まれた国の村で見てきた。売られた村の娘の半分ほどは、年季が明けると村に戻ってきたが、後の半分は行方もしれず帰ってくることはなかった。
その娘の小さな手に、重は故郷の森の谷間で村娘に手を引かれる思いがした。
部屋は、ベッドと飾り気のないドレッサーが一つだけの町同様に
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