「冬の肌」(1/3)/月乃助
、秋にあがってくるサーモンの内蔵を取り出し燻製にするほどの手間仕事らしかった。
娼家は少しばかりの店が立ち並らび街らしきものを作っている端、木道になった道の突き当たりに普通の家と変わらぬ姿だった。
窓からの明かりが、そこだけ冬の夜の雪が残る道に寒そうに張り付いていた。
男達が酔った足で扉をあければ、暖炉の明かりとむっとする温かさがあふれるように流れ出る。
重(しげ)は娼婦達のいる広間に足を踏み入れた時、壁にもたれるようにしている娘にすぐ目をひかれた。それは、痩せたその娘が日本の娘がしていたような桃割れに似たそんな髪の束ね方をしていたからに違いない。
不思議と値踏みされる女達の男の目を意識する息遣いのようなものが溢れる中、その娘一人、その場に似合わぬ無関心な冷たい雰囲気を漂わせていて、それが却って重の気を引いたからかもしれない。若い重は、他の酔った男達にその娘が取られはしないかと、少し心を騒がせたが、どの男達も肉付きの良いそんな女達を求めるのか、豊かな胸の女を選んでは手を引かれるように部屋に消えていった。
(つづく)
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