『冷熱』/あおい満月
 
冷えた氷の一片が
熱く手のひらを突き刺す
待つことを乞うように

力一杯握りしめると
氷の時間が止まる

氷のなかにあるものは霧と雲
そのなかにわたしの足跡はない

どんなに熱を残しても
氷の世界は沙漠の砂となり
記憶を消していく

跡形もないなみだのあとに
降れる雪は
何故か息をし鼓動する

雪がわたしを抱きしめる
この雪は知るだろうか

わたしの声を
わたしのことばを

この雪はわかるだろうか
一片の氷の刃を
冷たく溶かしてしまった

わたしの熱い哀しみを


                      2009.8.26(Wed)
戻る   Point(3)