ムンバイにて/都志雄
 
インドでの最後の日
褐色の海に
トビウオが跳ねる。
海底油田の採掘船の間をすりぬけて。

少女たちが物乞いをしている。
海を背にして。
彼女たちは自営業者なのか、と私は考える。
それとも甘苦い復讐なのだろうか、と。

インドでの最後の日
褐色の海に
トビウオが跳ねる。
天国に上るために、地獄に落ちるために。

父と息子が、立ち尽くす。
海を前にして。
二人はいつまでそこに立っているのか、と私は考える。
たとえ雲間から太陽が顔を出し、二人の額から汗が滝のように噴き出してもそこに立ち尽くすのか

インドでの最後の日
褐色の海に
トビウオが跳ねる。
太陽が顔を出し、私は日陰へと入る。
少女たちはさまよい、父子は立ち尽くす。

天国にも、地獄にも、手が届きそうなこの海辺で


天国にも、地獄にも、手が届きそうなこの海辺で


天国にも、

地獄にも、

手が届きそうな、

この海辺で



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