「波の声をきいて」(10)/月乃助
 
うよ、いきなり網で巻き上げられたりしてさ」
 そして、Hiromiは、これは発見したことと、
「そういえば、アザラシって水を飲まないみたい。あげてもみんな吐き出しちゃうから。きっと海水が喉から体の中に入らないようになっているのかもね」そんなことをSayoに言った。
 それなら、どうやって水分を供給しているのよと思いながら、アザラシとの共同生活からも、得るものはあるのかもしれない。Sayoは、そう思うことにして、昼寝をさせるためにHiromiが今度はアザラシに子守唄を歌っている姿を思うのだった。
 それは、Sayoが娘に歌った歌かもしれない。それをSayoは、母親から教わった。随分と昔のこと、それなのに、その歌を忘れることはないようだった。(つづく)

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