「波の声をきいて」(10)/月乃助
部屋に戻るとHiromiは、リビングの三人掛けのカウチに座ってテレビを見ていたが、その横でPenneが大きな潤んだ瞳の顔を上げ、Sayoが部屋に入ってくると、娘と一緒に光沢のある灰色の顔を向けた。
長い白い何本ものひげが昆虫の触覚のように見える。
「Hiromi、あんた、アザラシがおしっこしたりしたらどうすんの?あなたが、ちゃんと掃除してくれるんでしょうね。犬や猫みたいにトイレのトレーニングなんかできてないんだから。あんたのペットじゃないし、海に帰す野生のアザラシなんだからね」
Sayoは、Hiromiが本当にペットのようにしているので野生の言葉に力をこめて言った。
そんな親子の会
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)