濁流/within
 
かしたらこんな日に、川底に沈んだ魂の澱が清められるのかもしれない。普段、ゆっくりと崩れ落ちていく砂の城を、濁流は、日本海の荒波のように大きくひと口で胃に喰らい込み、命は一瞬で途絶えた。
 そして、失われていくことを思い知らされた。今年の春、母方の祖父と祖母が相次いで逝去した。祖父も祖母も旧三豊郡山本町の一隅で生まれた。祖父は幼少の頃、体が弱かったようだが、生まれもった剛健な精神で、三豊の自然のようにたくましく育った。祖母の幼い頃については詳しく知らされていないが、神田に実家があるらしく、それも曖昧で定かではないが、僕に語ることもなく、僕が訊くこともなかった。しかしその神田の家に一度だけ訪れたこと
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