濁流/within
伸ばして、はっきりと大きな声で『よろしくお願いします』と言うんやぞ。しっかり面接官の目ェ見てな。目がうわついとったら、この子は心ここにあらず、すぐに見抜かれるきんの」
と、祖父の教えがあってか、高校受験は無事に通過することができた。しかし、その頃から祖父母の家から少し遠ざかった。きっと思春期の言われぬ気恥ずかしさからだったのだろう。
再び、祖父母の家に行くようになったのは、大学生の時、体調を崩し、帰郷していた時のことだった。もうすっかり勉学への欲求を失っていた僕は、祖父母に引け目を感じつつも、幼い頃から無条件に受け入れてくれた祖父母の顔が見たくなったのだ。
それから母が祖父母の家へ用事
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)