ひとと赤と青と/小池房枝
 
ひとに赤が特別なのは
分かるような気がする
太陽が白だろうと黄色だろうと朝日と夕日
やがて夜には
闇の中にはっきりと赤かったであろう火

まして死にかかわるとき
そして必ず誕生のとき
流す血も
流される血も赤く

おりおりに熟した果実や
肥沃
あるいは不毛である土も
大地も
ひとにとって赤という色が
特別になっていったのは分かるような気がする

けれども青は
ひとの世界が赤茶けていようと
緑であろうと
昼見える限り青くあり続けた空の色とは何か


という単語を持たなかった語族にとっても
命の源であった泉や
湖や
大河や小川やオアシスやカレーズ
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