祖母の家出 /服部 剛
 
婆ちゃんが三途の川を渡ってから 
いつのまにやら9ヶ月 

日曜の朝早く目覚めた僕は 
思いついたように動き出し  
あまりの遺品の多さに 
ほったらかしていた
戸棚の奥から 
次から次へと手品のごとく出てくる 
衣類や布団の数々を、肩に担いで 
2階から1階へと、蟻の気分で上り下り・・・ 

空っぽになった戸棚に1枚 
残された 
からくさ模様の風呂敷を手に取れば 
この家で30年共に過ごした婆ちゃんが 
(いってきます)も言わないで 
不思議な家出をしたような 
おかしな気分になってくる 

からくさ模様の風呂敷を 
折り畳めば 
ふいに、脳裏に甦る
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