「波の声をきいて」(8)/月乃助
し落ち着いたのか、バス・タブに腹ばいに寝そべった姿で目を閉じ眠っている。
Sayoは、歯ブラシを取るとバス・ルームの電気を消して、ドアを少し開けたままにしておいた。そこは、アザラシの魚の息でむっとするほどなのに、、Sayoにとってはなんでもなく、それは、Hiromiも同じようだった。
「そう、名まえね。Penneにしたの」
Hiromiが、名前がないと不便でしょ、そう言っている。
そんな名まえにしたのは寸胴のアザラシの姿が、パスタのそれに似ているからだろう。Sayoは名まえをもったアザラシが、今では本当のペットのように思え、新しい住人が二人の暮らしに加わったような不思議な思いでその名まえを聞いていた。
(つづく)
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