詩人の樹 /服部 剛
頭上には
世界の全てを覆ってしまう
曇り空
足元には
この世に産声をあげた日の
ひかりの種
あぁ生きるとは
嘗(かつ)て地上で
夜の灯(あかり)の下に揺られ
もの哀しいブランコに腰かけた
名も無いピエロの物語ゆえ・・・
くしゃくしゃに破った
台本のゴミ屑を
一つの炎で燃やし尽くした後に
まぼろしの姿を現す
「詩人の樹」という、一冊の本
今こそ僕は求めよう
どんなに季節が巡ろうと
どんなに時代が過ぎようと
人のこころの心象に
変わらぬ姿で立っている
頭上を覆う哀しい空と
歓び疼(うず)くいのちの大地を
つなぎとめるように
枝葉を広げて立っている
詩人という名の、独りの樹を
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