カナシミビトの森/白糸雅樹
 
ゆれる薄い色の花
おだやかな池の色
甲高く響きわたるカナシミビトの歌
 
へたくそなその歌と踊りの一生懸命さに
人がふと
自分の哀しみをよそにくすっと笑ってしまった時
その時
 
人はもう
カナシミビトの森にはいない
カナシミビトは消滅する
なぜならば人が深い哀しみにひたってはいないから
 
カナシミビトは知っている
自分が一生懸命歌って踊れば
それが成功すれば
自分は消滅することを
 
それでも歌わずにはいられない
それでも踊らずにはいられない
それがカナシミビト

                            2009.10.21
                          (原案:奥主榮)


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