夜船/古月
 
探すだけの旅だが、そんな旅ももう終りである。
 電気鉄道が辿り着いた先は、夜の川縁に生い茂る葦原の中だった。
 車内放送がお馴染みの口上を読み上げ、私は下車の準備をする。網棚の新聞と、丸くなった猫が気懸りで、猫を持って降りると果たして窃盗罪になるのか否か、そんな埒も無いことに考えを巡らせていると、程なく列車は車輪の回転を止めた。
 人波に混ざって列を成し、皆と足並みを揃えて往くことで、初めての土地でも改札を間違わぬのは、生きる知恵である。空っぽの改札に設えられた箱に切符を放り込み、皆の向かう方へと同じに足を向けた。
 駅の外には茶屋があった。茶屋と言っても小汚い破屋で、橋の下の家の如き簡素
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