夢/新守山ダダマ
人はみんな夢から生まれてきたのと
あの子がおかしなことを言い始めたけど
僕は何も言わずにあの子の話を聞き続けて
いつしかあの子の声に包まれてる気分になって
あの子の言うことがぜんぶ本当ならいいのに
と思ったけどその思いすらどうでもよくなるくらい
自分の思考がだんだんふわふわして空に消えていって
僕はうたた寝したのだけど
目覚めの時はどうしても来てしまうもので
そこにはあの子も当然のようにいなくて
ただちょっと思い出しただけでうんざりするような
現実が待っていたのだけど
そう、現実は待っていただけで
僕はこの現実の中に目覚めたわけじゃなくて
現実は僕の外で待っていただけで
僕の中にはあの子の姿と声と
よく思い出せないけど不思議で楽しい世界の話が
たしかに残っていて
そのおかげで 自分が夢を見る前よりも身軽になって
目の前の現実と
少しはうまく付き合っていけそうな気がしたんだ
戻る 編 削 Point(3)