「波の声をきいて」(5)/月乃助
yoはそう言いながら、車もなにも自分が持っていないことなどお構いなしに、頭に上がってくる血をただ押し戻すだけだった。
まだ、完全に大人になりきっていない、多分、生まれて一年かそこいらだろう。ひざを落とすとそのアザラシの頭をなでた。
「それで、坊や達(ジェントルマン)は少しは手をかしてくれるのかしら」
「どうかな…、おれ達も忙しい体だからね。まだ、夕方の漁の魚を冷凍しないといけないしね」
「あらあら、大変だこと。まだ、お魚の相手をしないといけないのね。もっとも、女性が相手をしてくれそうもない方達だから、仕方ないのかしらね」
そう言いながら、Sayoはどうするかもう決めていた。
(つづく)
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