不在の一脚/古月
切り落とされた枝が芽吹いて
いびつに折れた朝の出来事
春まだ浅い日の寝ぼけまなこは
過ぎたことを知らずにいる
幸せな枝に降る雨は優しい
見知った顔をした人達のように
安らぎで包む穏やかな日々に
霞む景色が遠く聞こえる
裏返しても気づかない程の
愛情を着飾る人の庭では
落ちた雛鳥が見る長い長い夢の
未発達な翼が風を掴む
飛び方を知らない人が描いた
構図の狂った空だとしても
いつもの笑顔で笑い合えると
物語る人は信じている
*
滲んだ線を見限る
理想だけの世界で眠る
我が子を見守る母親の
鉤型の指が指し示す先の
背後で翳る
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)