不在の一脚/古月
 
切り落とされた枝が芽吹いて
いびつに折れた朝の出来事
春まだ浅い日の寝ぼけまなこは
過ぎたことを知らずにいる

幸せな枝に降る雨は優しい
見知った顔をした人達のように
安らぎで包む穏やかな日々に
霞む景色が遠く聞こえる


裏返しても気づかない程の
愛情を着飾る人の庭では
落ちた雛鳥が見る長い長い夢の
未発達な翼が風を掴む

飛び方を知らない人が描いた
構図の狂った空だとしても
いつもの笑顔で笑い合えると
物語る人は信じている


 *


滲んだ線を見限る
理想だけの世界で眠る
我が子を見守る母親の
鉤型の指が指し示す先の

背後で翳る
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