「波の声をきいて」(2)/月乃助
けだった。
今、店には、四、五組の夏色の客達が窓の方の席に、陽に炙られるように座っていた。
夏の日差しをありがたがるそんな客は、それは、何か食事をする時間も光合成を必要としているようにSayoには思えて、それならば、どんな花が咲くのかと客の顔をまじまじと見つめてしまうことがあった。
ダウンタウンにある他のレストランと比べても代わり映えのしない、西海岸料理が売り物のカジュアルな店だった。少なくともSayoは、この店をそう思っている。ランチには、ハンバーガー、ディナーにはビーフ・ステーキやサーモン・ステーキ。それでも、客足があるのは、味が良いのではなくて、そんなもので満足できる客の味覚の
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