「波の声をきいて」(2)/月乃助
 
ット・ハーバーの住民達同様Say-yoとSayoのことを呼ぶ。Sayoよりも背の低い、白髪の見える頭がすぐ目の横にあって、Sayoはすぐに壁に張られた紙から目を移すと、家族連れのテーブルへ向かった。
 皿を下げたが、デザートを勧めるのが面倒で、ただ、
「何か他にご注文は?」いつもの台詞を口にした。
「チェックをお願いしようか」旦那の方が、眠そうな目でSayoの顔を見て言った。この町に観光にやって来る者達が見せる、輝きを消した力の抜けた目だった。
(つづく)
戻る   Point(2)