「波の声をきいて」(1)/月乃助
 
を赤くして母親の横に座っていた。
 Sayoは、大仰に「とんでもないですよね、バーテンダーが間違えたそうで、すみませんでした」そう、誤りながら、グラスを子供の前に置いた。グラスの中のセロリ・スティックは、わずかにしんなりと力ない。
 ワインに赤ら顔の父親と女の子よりも少し大きな男の子は笑っているのに、ブロンドのボリュウムを出した髪形、それだけがゴージャスな母親の方は苦い顔でSayoを睨んでいた。Sayoは、それだから、その目を押し返すような完璧な笑顔を作ると、女を見下げてみた。
 今ではそんなことは、苦もなくできる。(つづく)

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