「あざらしの島」(3/3)/月乃助
 
もなくなっているようだった。
 女は、子供がボールをつま先でわずかに蹴り上げ、それをいつまでも続けるさまに、この子はもしかしたら、サッカーで財を成すかと思うのに、また、別な子を好きになればサッカーなどしていないようにも思える。女は、一つのことに集中したり、好きなものに執着したりすることがなかったが、それを女の生まれながらの性質とは思っておらず、娘も含めて人はだれもそんなものだと考えていた。
 そんなことを思うとき、決まって女は女を置い出て行った男のことを思い出した。その男を愛したことだけは、未だに忘れられずにいた。それは、どうやら女の未練らしかった。
 どこにでもいるような普通の顔の、普通な
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