丹桂の咲く夜。/aokage
 



秋の夜長を虫の音が彩り、

満ち足りるを知る月が中天に侍る。


私は金木犀の香りに包まれ、

その甘やかなまどろみの中で貴方の微笑みを想う。





これまでは一緒に聴いた声も、

これからは一人で聴いていくのですね。



一緒に見た月も、

独りで見るのですね。





分かっていた事だった。

解っていた筈だった。






けれど私は貴方を想い、今宵も泣いてしまうのでしょう。




何度祈っても、


何度泣き叫ぼうとも、




あの時は戻っては来ないのだから。








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