炎の鳥 ー雪の降る、家持の庭と夜空に響く、コルトレーンー /服部 剛
 
嘗(かつ)ての僕は頼りなく 
些細なことで今にも崩れ落ちそうな 
不安な、不安な
青白い魂でした・・・ 

今の僕は 
昔の服を脱ぎ棄て 
無明の闇に、瞳を閉じ 
高まる胸に、手をあて 

宇宙の果ての何処からか 
銀河の流れに運ばれる 
コルトレーンの抱くサックスの叫びと 
朔太郎の囁く不思議な声が 
微かに鼓膜を、震わせる 


 「日々を愛し、汝の欲する事を為せ・・・」 


布団を被り 
眠りの底へ落ちる時 
遥かな過去へと遡(さかのぼ)る 
「夢の窓」には映るのです 

奈良時代の家持(やかもち)が 
黒い哀しみを胸に
[次のページ]
戻る   Point(6)