ジェンガング/影山影司
時期ハズレのニット帽、膝下まですっぽり覆うウール質のコート、爺さんの格好は年寄りらしいモノトーン。
そして、胸には、ジェンガ。
やけに高いジェンガ。整然と土台を構築し、不必要なパーツを抜き取りきった美しさがある。ただ、風が吹くたびにゆらゆら揺れるほど、薄くなっている。物理的なものではない。密度的な、薄さだ。
僕は
脳味噌がぐじゅぐじゅと呻いているのを感じる。僕の見えている世界に何も根拠は無い。他人に聞いても真実は確かめられない。僕は確かにそう感じている。僕の瞳が、光を受け取っていなかったとしても、僕の残りの全てが、この世界を感じ取っている。爺さんが「いい天気ですね」と前を見
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