海中布団/snowworks
夜は水面下で様々な日常があります。僕は驚きあきれながら友人の不貞、息子の足の大きさの変化、昔恋人だった看護師の長い指での影絵などを満腹になるまで味わってから、それを肺でガラス片に砕いていく作業を繰り返します。そこに理由はないようです。効率は求めません。ペースが乱れると酸素不足になりますから。
大きな手が僕の首根っこあたりを捕まえます。そしてブクブク泡吹く僕を巨大な力で持ち上げ、夜明けの北風が荒ぶ海上まで吊し上げます。震えて「だって休日なんだよう」藻掻けば、大きな手は僕を離してくれます。「ヤッホウ」と叫びながら、ポッチャンと暖流の底へ落ちていきます。
二度目の夜は底が浅いようです。足が底
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