一足の靴 /
服部 剛
休憩室の入口に
逆さに置かれた、左右の靴。
すれ違いそうになりながら
互いは離れられないように
日向で時間(とき)を、止めていた。
(ひとりっきりの靴ほど
寂しいものはなく、
ふたりが揃い
靴は一つになるのです・・・)
休憩室のドアを開いて
僕は独り、午後の現場に向かう。
後ろ髪を引かれるように
逆さに並んだ、左右の靴を
この目のレンズに、焼きつけて
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