私は今日寝坊した、私は昨日死亡した。/ひとなつ
「おい中川さん、顔色悪いぞ」
隣で飲んでいた尾崎豊にそう言われた
いつものバー
いつもの席…
今さらになって思うのだが
このバーにはマスターというやつがいない
カウンターの向こうに自販機があり、
この店の唯一の店員である黒いスカートの女に金を渡すと、
女が適当に酒を選びボタンを押してくれる
女は金を受け取るときも酒をこっちによこすときも、絶対に何も喋らない
誰かが絡んでもひたすら黙殺するだけである
あまりしつこい客がいると、黙って店を出て、
エレベーターでビルの最上階に行ってしまうのが定番になっていた
彼女が屋上へのターミナル
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