博愛主義/八月のさかな
 

夕闇のなかでふるえながら
どれほどの
自分の亡骸をみおくったろう

優しいばかりでは生きてゆけないこと
たくさんの人たちに教えられて
それでも
世界をいとおしむやりかたを
変えられなくて

夜の雨はすき、
なんだかこころが静かになるから
雨の朝はきらい、
どこへいっても味方なんていないような気がするから

わたしはどこにいきたいんだろう
ここは東京のまんなかで
あたたかい部屋があって
ひとりぼっちで
昨夜もまた、もう一体のわたしを見送ったあとで

誰に会いたいんだろう
何もかも誰もかも愛していたつもりだったのに
世界を敵にまわしてしまったみたいな寂しさで

なのにわたしはきっと、今夜も
愛する、
愛する誰かと
ともにわらい、ともに泣いて
きっとわたしをも一度みおくる





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