「名」馬列伝(9) ビッグテースト/角田寿星
プ。
引退を決意する。2度目の落馬事故から、2年半が経っていた。
通常、騎手の引退は、よほどの活躍や功労がないかぎり、ひっそりと行われるのが常である。
が、常石の場合は違った。わずか通算82勝の騎手の、引退式が開催された。
「花の12期生」と呼ばれる同期の福永、和田らの呼びかけによるものだった。
和田が涙で声を詰まらせながら、常石のプロフィールを読み上げる。
武豊も出席し、花束を贈呈する。
「生きることは素晴らしい」と、常石は感謝のことばを告げた。ささやかながら晴れがましい引退式だった。
彼の周囲には必ず人がいた。そして有形無形のエールが絶えず送られた。
その才能に比して、あまり恵まれた騎手生活は過ごせなかった彼であったが、
彼の人生そのものは、けして不遇なものにはならないだろうと、強く予感する。
ビッグテースト 1998.3.9生
平地7戦1勝 障害18戦5勝
中山グランドジャンプ(JG1)
常石勝義 1503戦82勝(うち障害181戦15勝)
重賞3勝(小倉3歳S、中山GJ、関屋記念)
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