まあいい、それでも世界は廻っている/伊織
空が青ければ気分も晴れるほど人間は都合よくできていない。
それは夏になったからといって恋をしたことなどただの一度もない事実からも証明できる。
感情は引力で私を押し倒し、重力で沈める。
何回上書きしようが、温度はすぐに逃げていく。
どうせ縛られるなら縄やネクタイの方が気が利いている。
目に見えるだけ、まだ。
「I can fly.」
呟いて、嗤う。
それ、飛び降り?
憎しみが愛の裏返しだというなら、この気分に名前をつける術はない。
ただ、
ほんの少しだけでも、対になるであろうはずのものが、見えんことを。
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