「青髭」/月乃助
た 扉の
そこを開けることだけができずにいました
あまたな裏切りが 浴槽の中に血染めに横たわる
それが分かっていてもなお 恐れおののくのは、
囚われ人の消え去らぬ想いが
つめたく体のなかより見つめているから
物語の終焉を知っていながら、
いつその部屋に踏み入るのかを 待ちのぞむ
小部屋のあらたな住民となるその日を…
分からないのです
それほどまでに彼を憎むのなら、
なぜにここにいまだに いるのか
長く、暗い 闇を手探る小部屋の鍵は、
手にした鍵の束に 一番小さなそれだけが
どうしても 逝かずに残っています
てのひらに焼かれた 鮮明な
紅いあざのように、
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