詩集 『見ることから』 進 一男/渡 ひろこ
 
いて」)
 
この作品の中ではほんの数行だが、しっとりとした甘やかさが醸し出さ
れている。淡々と語る文章が多い中でだからこそ、立ちあがってくる。こ
こに岩盤の隙間に咲く新鮮な花を発見したような気がした。
題名の『見ることから』はリルケの『マルテの手記』の影響などで「見
ることから始め、そして学んで行くことにしよう」と心に決めたとあとが
きで述べられている。そうやって真摯な目がもたらすものは形となり、こ
れまで数々の作品を生み出してきた所以なのであろう。
積み重ねられてきた年月の深みも加わり、詩集も今回で八冊目になる。
だが、それを感じさせないほどの意欲的で新鮮な感性の源泉が、今なおこ
んこんと湧き出ている一冊なのである。



2009年『詩と思想』9月号掲載


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