遠い記憶/小岩井祐子
 
どれだけ考えても
記憶の深くを探しても
みつからないのです

あなたの声が

あたしはもう
永久に
喪ってしまったのでしょうか

あなたのしぐさや
あたしにくれたことばは
こんなにも鮮やかに
思い出せるのに

どうして
その時紡がれたはずの
色や
香りは
出てこないのでしょうか

それはあたしに
ひどく
かなしく
のしかかってくるのです

せめて
笑い声が
聞こえるならば
戻る   Point(2)