TASKEさんに捧ぐ ー七転び八起き列伝ノ夜ー /服部 剛
て
孤独な散歩者風に?ニヤリと、嗤(わら)う。
志賀直哉の住居跡の幻を通り過ぎて、坂を下り
高田馬場の駅まで歩いていって
戸山口の小さい低いトンネルを潜(くぐ)り抜け
うすら明かりの階段を、駅のホームへ上ってゆけば
終電1本前の山手線は、ゆっくりと滑(すべ)り出し
車窓には、肩を並べて座る詩人・TASKEとハニーちゃん。
いつも下を向いていた
顔をあげ、かわいい丸目を
ハニーちゃんは、開いてた。
いつもより誇らしげに
一輪の花を守るように
TASKEは肩を、組んでいた。
そんなふたりを乗せて
明日の方角へと運ぶ山手線と
車窓の額縁に入った「一枚の絵」は
ゆっくりと、高田馬場のホームを離れ
遠くに暖かい家のある
線路の先の暗闇へ
吸い込まれていった
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