おひとり戦記/あおば
 
い中を身軽な格好ですっ飛んでゆく
ぶつからないように
こけないようにと
それだけは切に願う
神仏を信じていないものの願いは
どこに向かうのか
鎌倉街道から
永福寺に向かう途中
明日からは秋といわれたツクツクホウシが
聞き取れないだみ声で
懸命に経を読む
少し蒸し暑いのが救いと
公園の水飲み場で水を飲む
縄文人の居住跡がコンクリートで保存されている
四阿のような家か
縦穴式の住居か
定かでないが
いくつかの穴が
大地に深く穿かれていて
太い柱でも大丈夫だと
言いたそうな遺跡跡を残して
神田川沿いの道をひたすら辿ると
旧帝都電鉄改め京王井の頭線電車がスマートに走る
湘南型2枚窓のスタイルを前面に残し
20メートル4扉車は
車を持たないハイティーンの身軽な躯を座席に埋め
定刻に発車する
小銭入れの中には
残金136円






「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは鈴川ゆかりさん

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