のっぺらぼう/美味
あぁ 上っ面が滑っていく
君に言われた一言で
波にさらわれてしまった
遠く沖へ
「まるで、のっぺらぼう、ね」
目、鼻、口
触ってみればちゃんとそこにあるのに
なんで、君は、そうやって
ボクを
ぼくヲ
テーブルを叩いた拍子に
倒れたコップからあふれ出した水に
写る僕の顔は
まるで
そう、まるで
のっぺらぼうだ
君は精一杯、眉を眉間に寄せて、
鼻と口がくっついてしまいそうなほど、寄せて
僕を睨み付けると
ふんと、鼻を鳴らして、出て行ってしまった
波と共に
一人、取り残された僕はというと
鏡の前で、君が最後に残してくれた表情を
一生懸命練習していた
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