「珊瑚」/月乃助
 

 流れにあらがい
     生きていた頃が、ありました
       いつもいつまでも
    淀み 聞かされた
 乳房の谷に湧き出る 
哀瀬の流れの
   さだまらなかった

  失い呑みこまれるせつな
    出会い 逃げとる心の海綿の
 白い柔らかさ
  ひとりぽつねん
とまらぬ 悲哀の細流に 
 あらわれた砂州は、
   みだらなベッドに
       息をついた情炎の夜のおとずれ

     哀苦のしずくは 紅涙となって
   流れ出るきずあとから
  自ら作ったさびれた影の日月のすえ
 ようよう
消し去ったなみだのすじでした

 それでも、果てなく
  わたしをつつむ想いは、
         あまい透水(とうすい)
    に いざなわれ
  いぶき、

 流れにまかせ
あなたの海に堕つ 旅の終わり 
 繁茂する花にかわり
  海床に咲き ほほえむ
   光あふれる緋色の 
 珊瑚となって







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