夕日坂/灯兎
 
に結び付けてきてしまったのだろう。その中にはもう二度と手に入らないものや決して失ってはいけないものがあって、そのことを考えると僕は影が半分に引き裂かれたような気持ちになる。

いつの間にか、君だけを見ていたつもりだったのに、結局は君だけを見ていなかったのかもしれない。でなければ、こんなふうに空っぽになってまで、君のことを想い続けたりはしないだろう。君の話すことや君の描くもの、指先に伝わる君の鼓動さえも、僕には愛しくて、その重さと大きさが怖くて、明日のことまでも見失ってしまっていたんだ。そんなありふれた、くだらない日々にさえ、僕はもう戻れなくて、今も残るのは優しさの余熱だけなんだ。

一人で歩いてきたはずの道なのに、誰かが誰かを探しているような気がして、立ち止まって、月を見上げる。今の僕のそばにあるのは、ひとつ足りない影とひとつ分の余熱だけだというのに、振り返ればまだいつでも君の手を掴めるんだと思っていたい。

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