Lavender/香気/月乃助
 

雲を切る
つめたい雨が
ひそやかに やってくる 
街は、もう秋でした

はだに まとわりつくようなとおり雨に
好きなように ぬれてあるけば
どんな、誰が住んでいようと
わらいごえに 団欒のあたたかそうな家の
プラスチックのおもちゃが水を集める庭に
かさなる 花があるのです

なにげないようにやってきては、ゆびに触れます
それは、わざとそうするように せつな
めのくらむほどの香が くっぐっと
わたしを抱きとめて、
季節が変わったばかりの ぬれた
日焼けのさめやらぬ通りに
平気で投げ出します

よろこびのあとなら
乾きつかれ眠り終わるように 身をよせあう
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