蒸発する夜/ogawa hana
 

いいえ、わかります、
もう幾度となく見てきたからです、
言わせてもらえば、
あなたのような小さな虫は、
所詮蜘蛛のような頭のいい奴には敵わないのです。
だけど、あなたは喉が渇く。
かさかさの土肌に垂れる汗もしだいに塩味がきつくなってゆき、
体液でさえも口に含みたくなるような日照り。
日が暮れても、
豆電球が爪に、縦線が入った輝きのないさまをうつし出し、
あなたはゆいいつの鏡を失いたくないと、
夜明けまでまた磨くのでしょう。
魚は水をはじいて明星の空を飛んでゆきます。
闇はよろこびを以って永遠と相殺され、朝のニュースがはじまります。
あなたはその頃すでに身動きはとれず
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