スタジアムの夢/月乃助
力のかぎり追いかけるのは、
自分の力をしんじているかのように
止まることをも知らず
一点に集中した想いのはてなのです
おしもどす秋の風に
それが、遠くにあることなど知らずに
駆け抜ける 空と四角い表面の緑色にはさまれ
浮き立つような鮮やかな赤に黄に染まる小さな姿
陽を陰る スタジアムに列をなす観客の
まだら模様の歓声が、風を押し切り
はためく国旗の垂直に降りてくる影にも
とまどいもしない
子供たちが追いかけるのは、ボールなどでなく
夢でした
たったひとりの子さえも
みまがうことなく追いかけるそれは、
ひととき黒白のボールになって飛び交いますが、
あるも
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