やさしい扉/月乃助
ながいあいだ 知らずにいた
きっと知らずにいたくて、知らないふり
大学を卒業しても 仕事に糧をえても 結婚しても
ずっと、そこに扉があったなんて、
そのことすらも 気づかずにいた
わたしはわたしで 普通だって、信じていた
優しい親の顔で 子供の手をひいていても
家族で食事をしても
笑顔で仕事をしていても やっぱり
ずっときえずにあった 扉
でも、とうとう気づかされた
ひどく回り道をしたようで、それでいて、行路は
最短距離でめぐり会ったのかもしれない
だれも 普通は持っているようなものなのに
すぐにそこから、するっと入っていく人も 多いのに
どうしてか、
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