戦争を捉える方法 −奥主 榮詩集『日本はいま戦争をしている』−/大村 浩一
 
えさせて頂くが、終戦直後の都市の描写であることは相違
ない。第1連に「むざんなものは姿を変えただけで揺るがない」とあるように、
戦争が終わっても大衆の苦しみは変わらない。その中にも立ち直ろうとする力
は息づいている。
 そこまでなら誰でも描くだろう。だがこの詩はこの苦しみの忘却と、次への
苦しみを予感させて結ばれている。「たちこめているのはなまぐさくかんばし
き血の香り」を知る人たちが「あかるくあどけなく笑いを浮かべている」とは
一体どういうことか。
 こうした複雑さ困難さに対して、逃げずに取り組んで描き切った事がこの詩
集の成果に結びついたと私は思う。

 岸田将幸は前出の
[次のページ]
戻る   Point(5)