戦争を捉える方法 −奥主 榮詩集『日本はいま戦争をしている』−/大村 浩一
せながら
ラジオから流れる音楽 走りまわるジープ
陽気に浮かれた景色の中で そのうしろにかくされた
むざんなものは姿を変えただけで揺るがない
青天井の下を寒風が吹き過ぎる 一升瓶の中を棒で突き
瓦礫の下から拾い集めた履物の山を紐で括り
ひびわれた手で隙間風をふうじこめ まじないを唱え
草臥れて力なくたおれ伏す 舗道の上には
廃兵達の義足の音が蟻の歩みで重なり合い
かつぎだされなかったみこしをかかげようと無力な
シュプレヒコールがぽつりぽつりと声にされ
呼び戻しかけた命令を猶もここにとどめようとするかのように
固着された記憶にしたがって語られるほどに
人々はうなだれ
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