戦争を捉える方法 −奥主 榮詩集『日本はいま戦争をしている』−/大村 浩一
 
うにふるう鉄骨だけのビルの下
排水路は大空へ跨線橋は壕をこえ八十八の重なりがかつては
手に掲げられた旗に彩られた広場へ雪崩れこむ五月の神話への序曲
たちこめているのはなまぐさくかんばしき血の香り
それは遠い昔に回転の向きを切り換えた歯車の軋み
あらゆるちかいを投げやったそれらを
思いもよらぬこととしてかつて焦土に辿りついた人々は
ぽっかりと抜け落ちた空白の中 ただ生き延びたことを喜び
あかるくあどけなく笑いを浮かべている
大地という名の母の胸に抱かれることに安心しきり涎までこぼし

(旧題名『闇に塗り込められた夜を透かし姿をあらわしたのは』)


 つたない解題は控えさ
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