マイク事件 ーはっとりんの反省文ー /服部 剛
 
したわ)
と言うのを聞いて僕は 
ほっとしながらへなへなとずっこけた 


「ハットリ君・・・!!!」 
顔をあげれば、主任のおばちゃん大噴火 
(瞳には、炎がめらめら、燃えていた・・・) 
僕はただちにしゃきっとなって 
ぺこりぺこりと、頭を下げた 


  *


とっぷり日も暮れた 
夜の駐車場で 
まっくらな車に入り 
運転席でひと時 
凹んだ姿勢であくびを、ひとつ。 

今の職場で10年過ぎたわたくしに 
両目の炎をめらめら燃やし 
(あんたがしっかりせんとあかんのよ!)と 
噴火してくれるひともそういない・・・ 

老人ホームの出口から 
少しうつむいた足取りで 
スクーターにまたがった、主任のおばちゃん 
門の外へ、出ていった 

しーんとした運転席の僕は
誰にも聞こえぬ声でしんみりと 
(ありがとう・・・)を呟いて 
駐車場の暗がりにライトを灯し 
車のキーをくいっと廻した 







戻る   Point(4)