アポカテラロ 花嫁/人 さわこ
 
の人の中に、私を知らない母が生きている。息をはくたびに静けさに気づく、天井が鳴る。この場所では時が止まる、蘇ることもせずに。大きすぎる過去と向かい、長い確認作業が続く。理由ではなく事実を淡々と、記憶をなぞっていくだけで、私は満足したい。何かするわけじゃない、縋るつもりもない。ただ明瞭に、私が意味になるための。ずっとずっと、しっかりとした筆跡に憧れていたから、何ひとつ変わっていない未来が嫌だった。

いったい、この手は何を繋ぐのか。
終わらない計算をしている。
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